ゆーすけと愉快な仲間達。アヒャ!

山田END

俺が働いていた腐れ居酒屋、バイトに山田崇という男がいた。

こいつはなにやら、ほんのちょっと良い大学を出ている癖に、居酒屋フリーター。しかも、以前は社員だったのだが、あまりの仕事に耐えられず辞めたヤツだ。しかも辞めたハズなのに、バイトに戻ってまでこの居酒屋にしがみ付く、というとんでもない暴挙を平気でやってのけていた。

もちろん、こいつの仕事は相当シャバい。
仕事に来ているというより、女目当てに来ているというほうが正しい。それは彼のあからさまな行動から見て取れる。

例えば、ヤツが仕事が早上がりの日なんかは、同じ時間に上がるホールの女の子をわざわざ送るべく、仕事を中途半端にして時間ピッタリに上がり、神のごとく音速の速さで私服に着替え、猛ダッシュで駐車場まで走り、ホールの女の子が店を出る前には店の前に自分の車を乗り付けて女の子に一言

「送っていくよ。乗っていかない?」

等と言う。

もちろん、女の子は「いや、いいです。」と断るのだが。

この必死の暗躍失敗の光景が笑えてたまらない。こいつはそんなヤツだ。

 

その山田がエンディングの危機に陥った事件があった。

時は年末年始。うちの腐れ居酒屋も、1年で1番忙しい時期だ。

右を見ても、左を見ても、皆テンパイ。さらには幹部連中がウジャウジャ虫のように沸いていて、ストレス溜まりまくっている。
気を抜いたらいつ殺されるか解からない、そんな殺伐とした居酒屋と化していた。

特にこの日は通常の10倍は売れる予測の日。200万という売り上げ目標に、皆は気合も充分。今日は最後の力を振り絞って、終わったら死んでも良いくらいの覚悟をしている。もちろん、俺も1つのポジションで200万売ることに対して、楽しみで楽しみで仕方なかった。言い換えれば気狂いだが。

山田はというと、なにやらホールで女の子と遊んでいる。おまえな、これからピーク迎えるんだぞ?幹部に殺されろ。

俺の願いは叶った。

ピーク時間も終わろうとする頃、なにやら幹部の中でも強力な「本部長」やらが店長に対してブチ切れている。

 

本部長「なんかよぉ、山田崇がよぉ、つまみ食いしてやがったんだよ。」

店長「えっ!?山田がですか?」

本部長「あいつ、休憩行かせるか、クビにしろよ。

店長「はい?き、休憩かクビ・・・ですか?」

 

意味がわからない。さすが腐れ居酒屋の幹部。つまみ食いでイキナリの2択。ありえねぇ。

その後、山田は取りあえず休憩に入れられたが、休憩から戻ってきた後だった。

本部長は調理場の前に山田を連れて来る。

立ちながら首を90度下に折り曲げてうなだれる山田。まさに犯罪者が護送される瞬間だ。
そして山田の前に仁王立ちの本部長が吠える。

 

本部長「おまえよぉ、皆がせっかく200万売ろうと頑張ってる時によぉ、つまみ食いか?オイ!」

 

ヤ○ザも真っ青な風貌から繰り出されるクリティカルヒット。山田は成す術無し。
本部長はさらに続ける。

 

本部長「昔、社員やってたんだってなぁ。今バイトに戻ってから長いんだろ?」

山田「はい・・・」

本部長「そんな気持ちでちんたらバイトするくらいならよぉ、いっその事社員になって店長目指したほうが良いんじゃねぇの?

 

意味不明。確実に関係ない方向に話がいっている。本部長、予測不能だ。

 

本部長「社員にならないなら、やめちまえよ。意味ねぇし。」

 

またしても2択。今度は店長目指すかクビの選択を迫られた山田。俺は笑いを堪えるべく、洗い物する振りしてシンクに顔を突っ込んでいた。

完膚無きまでに亡き者にされた山田。ようするに本部長は、社員にした後でボロボロにしようという魂胆だ。悪魔だ。鬼畜だ。でも楽しい。

いきなりのエンディングに直面した山田。もう逃げ場はない。俺は笑いを堪えながら仕事をしていた。よし、むしろ辞めろ。

しかしその後、山田の件については店長が間に入り、一応即死亡にはならなかった。
その替わりとして、遠隔地にヘルプとして1ヶ月程遠征をさせられるハメになっていたが。

それでも辞めない山田。恥ずかしさが無いのだろうか?
今でも続けているらしいが、幹部連には徹底的に嫌われているヤツには未来は無い。

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