この頃は懐かしいな。

渡せなかったお守り

俺は何事にも一生懸命な人が好きである。
男にしても女にしても、在りのままの姿で必死に生きている、そんなヤツでないと俺は好きになれない。だから故に、俺は嫌いなヤツが多いのかもしれない。
俺が好きになった女は数多くいるが、そんな中でも一際素晴らしい人がいた。

その娘の名前は唯(仮名)

知り合った場所は、たびたび駄文で登場する伝説のDQN居酒屋だ。
彼女は、入ってきた当初から凄まじかった。久々に見たな。あんなタイプ。なんというか典型的な天然の気質を身にまとっており、悪魔的な要素は皆無。無下に叱られないタイプ。そんな雰囲気だ。

唯は掛け持ちでバイトをしているという。さらに、男と同棲をしており家事全般もこなす。なんともまぁダビスタで言う、これ以上無い仕上がり。しっかりしてるわ。
天然系の人って、基本的に純粋なのね。さとうたまをは真性ドキュソだろうし、小倉なんとかは天然じゃなくて4次元世界の住人。これとは全然違う。本当に普通の天然系。
まず、唯は何言っても笑顔。俺が悪魔的に暗躍しても笑顔。限りなく笑顔。いつも笑顔な人って良いね。憧れる。
さらに素直。仕事の指示通りにキチンと動く。メチャメチャ頑張る。どこかの禿げみたく「ええ~、めんどくさいぃ~」等と腐れてない。そんなヤシは削除してやる。唯は、寝不足だろうと具合悪かろうと限りなく頑張る。
こんな所を見ると、如何に親しみ易い人物であることに納得がいく。ホントすごいわ。

ある時、俺は唯を遊びに誘ってみた。俺も俺でストレートに

「唯ちゃん、デートしよ!(*゚▽゚)」

そのまんま。別に下心等無い。8割くらいは冗談だった。どうせ適当な返事が返ってくると思っていた。しかし唯は

「いいよ~」

あのな、お前、素直にも程があるだろ。考える間も無く即答か。大体、お前男と同棲してるじゃねぇか。ドキュソですか?

あっさりデートOK。絶対変だ。何か裏がある。騙されているんじゃねぇか?さとうたまを的ドキュソだったか?
俺はあまりにもありえない展開に少々呆気に取られた。
でも約束した手前、もうデートしないわけにはいかない。よし。面白い。

その一週間後、札幌に向かう俺と唯。今日はなにやら祭りがあるらしい。ある意味、道民の集いだ。祭りとは好都合。これには何も問題がない。ただ、車の移動途中の会話に困る。いつものことだな。
ぐちゃぐちゃどろどろ話しかける俺。唯は「うんうん」という感じで俺の話に耳を傾ける。良い子だ。
いや、何か違う。そうだ、彼女は積極的に話そうとしない。これは辛い。一般な会話が弾むとは言い難いのかも。

そんな悪戦苦闘しながら、会話が途切れることもなく無事札幌へ着いた。良く頑張ったな俺。

中島公園だったかが祭りの会場。当然のごとく俺は路駐を諦め、札幌駅前の駐車場に停める。
俺と唯は地下鉄で会場へ。なんかウキウキしないなぁ。なんでだろ?

祭り会場は夕方だというのに物凄い人手。ありえねぇ。見るだけで疲れる。
人ごみの中、俺と唯はカキ氷やキティちゃんやプーさんと戯れながら歩く。祭りって楽しいか?
何気にフラフラして、祭り終了。限りなく終了。もういい。

帰り道、唯は色々と話すようになった。自分の将来、同棲の現状、そして恋愛感、全てにおいて純粋だ。どうやら俺が誤解していたようだ。裏などない。
一番気になっていたのは、彼氏がいるのに何故俺とデートをする気になったのか、だ。それだけは聞いておかねばならぬ。唯は言う、

「ん?別に悪い人じゃないと思ったから。なんとなくかな?」

そか。お前って、どこまでも素直だな。エライ。澄みきってやがる。

この初デートをきっかけに、俺はたびたび唯と遊びに行くようになった。ある時は居酒屋、ある時はドライブ、それはもう楽しかった。
そして、親しくなっていく内に、唯は彼氏のドキュソっぷりを色々話してくれた。

唯の彼氏というのはとんでもなくて、暴力振るうわ、家事をやらねぇわ、浮気はしてるわ、そりゃもう酷いもの。唯はそのせいで精神的に参ってしまい、とある病気を患っているという。
もう別れてしまいたいらしい。俺も「別れろ、別れろ」と暗躍を始める。
ただ、唯には問題があり、実家を無断で出てきた経緯がある。帰りたくても帰れない。1人で出て行きたくても金がない。八方塞がり状態。でも、どうにかしてやりてぇ。可哀想だ。
なんなんだ。ありえねぇ、俺。何もできないのか?

俺は決心した。仕掛けてみよう。迷惑でも駄目でも良いさ。こいつになら結果がどうあれ、その後も普通に接することができる。俺の勝手かもしれないが。

そして運命の日。
俺と唯はいつものように酒を煽っていた。いつもはザルな唯も、この日はちょいと酔っている。

「ゆーすけくんって、好きな娘いないの?」

キタか?キタのか?

「俺?俺は唯が好きだ。」

「えっ?」

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

言っちまった。
唯はなんか涙流しながら驚きと共に悩んでるし。いや、すまない。

気を取り直し、店を出て俺は普通に飲酒運転。飲酒等ありえません。今はしてません。
どこか適当に車を停めようとする。海が見える場所が良いなアヒャ!ヽ(゚∀゚)ノ
夜の帳の中、穏やかで汚い太平洋を望みながら俺と唯は語らう。

俺「なぁ、俺さ、どうしようもなくてとんでもないんだけど、つきあってくれ。」

唯「今は・・・・・・・・」

俺「彼氏と別れた後で良いから。」

唯「・・・うん」

唯は泣きながらも俺を信じてくれた。よし。俺も唯を信じる。

後日、なんだかんだで実家に連れ戻された唯。家族に半分拉致られたみたい。彼氏とは本格的に別れたらしい。

しばらくして、俺は夜中に電話を掛ける。

「絶対俺が幸せにしてやるからよ」

「・・・うん」

もう、唯は泣いて泣いて電話どころではなかった。
実家に戻り、心の拠り所を無くしてうなだれる唯は、それでも新たな仕事を見つけて頑張るという。
そんなに頑張るなよ。体を直してからにしろよ。なにより俺がいるじゃねぇかよ・・・
俺は居ても立ってもいられなくなり、何かが乗り移ったように突然車に乗り込む。

もう、物凄い勢いで飛ばす。60キロ先の唯の場所まで公道を130キロでぶっ飛ばす。一発免停だ。そんなの知らねぇ。待ってろよ、唯。

着いた先で、俺は唯の心の支えになってやる。・・・今はこれしかできないんだよな。

その後も、唯の体が早く良くなるように神社に出向き、お守りを貰って来たりもした。

しかし、最後に逢ったのは俺が夜中に飛んで行ったあの時。

新しい仕事を連絡見つけて頑張っている唯。
春まで待ってくれ。と言い残して唯は忙しくなった。
俺は唯の邪魔になってはいけないと思い、落ち着くまで待つ決意をした。
例え連絡が取れなくても、時が来れば解決するだろうと思っていた。
あんなにも純粋で、素直で、嘘や裏切りが嫌いな唯。
人を信じない俺が、信じることだけを頼りにしていた。
それは、唯だからこそだったのかもしれない。

春に連絡は来なかった。

それでも俺は信じていた。
きっと、いつか笑顔で戻ってきてくれることを。

今でも俺のそばには渡せなかったお守りが眠っている・・・

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