淡き想い出。

3度目のラブレター

あれは俺が高校生の頃。今から8~9年程前だろうか。
当時俺は高校生という立場ながら、午前中は寝て午後から学校、放課後はバイト、夜中にアヒャー!ヽ(゚∀゚)ノ なほど遊んでいた。まともな高校生ではない。
というのも最初に在籍していた高校は一応の進学校で、進学校にありがちな非常にマジメな奴らの集まり。クソも楽しくなかった。他のDQN高校の友達のほうが多かったしな。
そんな俺は悪友と色々ないたずらをしていた。まさに俺の北海道での最盛期。毎日が狂っていた。高校なんてどーでも良かった。

そんな崖っぷちの腐れ高校生活に、ある事件が起こった。
その日は珍しく、朝から学校に行った。チャリで3分の所なのにすでにダルダル。教室に着いたら真っ先に寝ようと決めていた。
いつものように先生に学生名簿で頭を叩かれて時折目を覚ましながらも、俺は午前中の授業をつつがなく寝て乗り切った。

待望の昼休み。これでもかって程に弁当を食う。学内で数少ないバカ友達と、放送禁止用語を並べながらお昼のひと時を堪能。たまには良いもんだ。
さて、何しよう。と何気に机の中に手を入れるとそこには一枚の紙が。あん?なんだこれ?

ゆーすけくんへ。
お昼休みに格技場で待ってます。
Mより。

おおっ!これはっ!ラブレターか!?(*゚▽゚)
驚いた俺にワサワサとクラスの男共が集って来る。お前らゴキブリか。

「なになになになになに~~~~~?それ~~?」
「あっ!ラブレターじゃん!!!!」

うるせぇ。お前ら。騒ぐな。喚くな。とりあえず死ね。
等と思いながらも俺はドキドキだった。やべぇ、なんだこれ。どうしよ。
待てよ、もしかしたらクラスの男が俺をからかっているんじゃねぇだろうな?ありえない話でもない。
いや、でも確実に女の筆跡だし…いや、クラスの女がからかったという線も…第一、格技場っていうのが引っかかる…
疑いは海よりも深く雲よりも高くどこまでも。悩んでいても仕方ない。つーか昼休みって、あと15分で終わるんだけど。

俺は意を決して格技場へ向かった。
例え騙されてようとも、男共が喧嘩吹っかけて来ようとも、何とかなるさ。そん時はそん時だ。そんなヤツは排除してやる。

格技場に到着。
なにやら男が5~6人で柔道をして遊んでいる。お前ら昼休みに柔道か。巴投げ下手すぎ。
俺は待つ。ひたすら待つ。
しかし、誰一人として俺に声をかけて来ない。というよりこんな所に女なんているわけもねぇし。

チャイムが鳴った。あ~あ。
俺は訳も解からず教室へ戻る。別にクラスは至って普通。冷やかしたりだの気配はまったくない。う~ん、なんだったんだ?

そして無事午後の授業を終え、帰宅。今日の出来事は闇のままに終わるかに思った。

が、次の日。

俺はこの日も珍しく、朝から登校。別に意味などない。とりあえず学校に行ってみただけだ。
この日は、午前中からキチンと授業を受ける。やべぇ、授業内容が理解不能だ。have動詞って何?俺は1ヶ月ぶりの英語に苦戦。当たり前だ。
昼休みに入り、俺のテンションは絶好調。バカ友達と栗がどうとか、リスがどうとか、清純なカケラも無い会話で盛り上がる。まさにアホ。
そうこうする内に、弁当を食べ終わる俺。次の授業の準備でもしておこうと机の中から教科書を取り出す。が、またもや不穏な紙切れを発見。それは、またしてもラブレターだった。

ゆーすけくんへ。
昨日はごめんなさい。今日もお昼休みに格技場で待ってますので、必ず来てください。
Mより。

アヒャ!ヽ(゚∀゚)ノ また格技場かよ!つーか、いつ机の中に入れたんだ?入れるとするならば、授業の合間の休憩時間しか考えられない。
俺は昨日と同じように格技場へ向かう。もうなんか息が荒い。ハァハァしてきた。高山病だ。

今日は誰も居ない格技場。俺はただ独り待つ。ひたすら待つ。チャイムが鳴る。
誰もこねぇ。ありえねぇから。
なんだよ、人を呼び出しておいて。意味がわからねぇ。
俺はちょいと不機嫌ながらも、教室へ戻る。クラスは普段通り。何も変わっちゃいない。あ~あ。

この日も何も無かった。明日は?

さらに次の日、俺は学校へ行った。これで3日連続だ。これはもう、ことの真相を知りたいのなら行くしかない。そんな思いに完全に突き動かされていた。
いつものように寝て、いつものように脳汁を垂らしながら弁当を食べて、いつものようにラブレター発見。もうライフワークか?
そんな今日の相手からのメッセージ。また格技場か?また来ないのか?それとも今日は…
俺は秘密の花園を覗くような気分で、手紙の中身を見た。3度目の正直!

ゆーすけくんへ。
ごめんなさい。思っていたのと違った。
Mより。

あん?何が違うんだ?「違った」って何だよ!ありえねぇから。
あのな、俺を期待させておいてこれかよ。大体、俺に何を求めていたんだ?Mって誰よ?俺にSになれという暗黙の了解か?
意味不明。俺は錯乱状態。結局、俺を冷やかしたんだろ?この腐れ女共がぁ!(#・∀・)

まったくもって予想もつかない終わり方。相手の勝手な完結でこの事件は幕を閉じた。ありえなさすぎる。

…後日
俺にラブレターを送った女が判明した。「M」というのはその女のイニシャル。そして俺と同じクラスの役員。そして、やっぱり俺のことを好きらしい、と聞いた。
この女は、俺が中学時代に通っていた進学塾で隣同士だったことがある女だった。
中学の時はメガネを掛けていて、なかなか可愛いと思っていたが、高校に入ってからコンタクトにしていた。メガネ似合っていたのにな。無理にコンタクトにしたってカワイクねぇよ。
そんなことをちょっとだけ考えながら、俺はまたいつもの狂いの生活に戻った。ふと世間を見ると、夏服への衣替えの季節が近づいてた。

それからは一切何もなかったように時は流れた。翌年、俺は高校を辞め、フリーターへの道を辿ることとなる。

でも、たまに思い出す。あの若かりし頃のラブレターを。

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